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  • 2023.11.13

    【開催報告】ハンス?ヴァルター?ガブラー氏講演「愛の復活、そのゆくえ——今、ガブラー版『ユリシーズ』の意義を語る」

2023年10月15日(日)、本学3号館321教室にて、国際編集文献学研究センター主催によるイベント、ハンス?ヴァルター?ガブラー氏講演「愛の復活、そのゆくえ——今、ガブラー版『ユリシーズ』の意義を語る」を開催しました。ジェイムズ?ジョイスの『ユリシーズ』は昨年2022年に初版刊行100周年を迎えました。今回のイベントでは、ジョイス研究において広く使用されているガブラー版『ユリシーズ』の編集をめぐって、日本人研究者による「ガブラー版『ユリシーズ』入門ワークショップ」、そして、編者ガブラー氏によるZoom講演を実施しました。当日は、50 名近くの方々にご参加いただき、ワークショップ?講演会ともに、活発な質疑応答が行われ、有意義かつ実りあるものとしてイベントは成功裏に終了しました。

まず、ワークショップでは、横内一雄先生(関西学院大学教授)、南谷奉良先生(京都大学准教授)をお招きして、ガブラー版『ユリシーズ』の具体的な編集方法と出版後の研究史上の位置づけについてそれぞれお話しいただきました。横内先生には、3巻本からなるガブラー版『ユリシーズ』の読み解き方をご教授いただきました。本文に付されている諸種の記号や第3巻に収録されているTextual NotesおよびHistorical Collationを細かく確認しながら、草稿からタイプ稿、校正稿などにいたるジョイスの執筆過程、そして執筆過程および出版以降に生じた様々な異文が、ガブラー版でどのように提示されているのかを詳細にご説明いただきました。続いて南谷先生には、『ユリシーズ』の出版史を踏まえたうえで、第9挿話においてガブラー版が本文に復活させた愛のパッセージ(「自分が話していることがわかっているのか? 愛、そう。すべての人間が知っている言葉。[…]」)をめぐって、ガブラー版出版後に起きた論争についてお話しいただきました。ワークショップを通じて、ガブラー版の編集の神髄がテクストの生成過程や異文を示す大量の〈資料〉にあること、そして、その編集が既存の作品理解と対立すると同時に新たな読みの可能性を開いたこと、すなわち、ガブラー版の編集が果たした編集上、研究史上の意義が確認されました。

 


続く講演会では、ワークショップでも取り上げられたこの第9挿話の愛のパッセージについて、ガブラー先生に、 “Do you know what you are talking about?” と題して、Zoomでのご講演をしていただきました(通訳:小野瀬宗一郎先生(日本女子大学講師))。「ローゼンバッハ手稿(Rosenbach Manuscript)」と呼ばれるジョイスの清書稿に書かれ、しかし初版本には欠落しているこのパッセージ(“Do you know what you are talking about? Love, yes. […]”)について、その編集の判断はどのようにしてなされたのか——ガブラー先生が実際に行った『ユリシーズ』編集作業の一端を、ひとつの挿話、それもひとつのパッセージを中心に、詳細にご説明いただきました。当該のパッセージに関して言えば、ガブラー先生は、この清書稿と初版版組のもとになったタイプ稿の調査から、失われた「仕上げ用原稿(the final working draft)」の存在を推測し、そこから、その「仕上げ原稿」をもとにタイプ原稿が作成された際に、タイピストの見落としによって、このパッセージが欠落してしまった、という可能性を指摘されています。つまり、このパッセージの欠落は、作者による意図的な削除ではなく、第三者の単なる人為的なミスによるものだったということです。さらに、ガブラー先生によれば、この愛のパッセージは、物語上の整合性を欠くものではなく、むしろ小説最後の場面、最後の言葉(“Yes”)とも共鳴したものになっているのです。以上のように、本講演会は、作家が関与した様々なマテリアルをどのように分析し、そしてそこからどのように本文を編集すべきなのかという編集作業の中心的な問題を、編集者本人の口から直接お伺いする、貴重なイベントとなりました。

その後の質疑応答では、ジョイスがなぜそうしたタイピストのミスを見落としてしまったのか、またはジョイスとタイピストとの関係性はどうだったのか、といった講演の内容に直接関係するものから、ドイツとイギリスそれぞれの編集文献学に対する自身の『ユリシーズ』編集の位置づけなど広く編集文献学に関わる問題まで、幅広い内容の質問が寄せられました。いずれの質問にもガブラー先生から熱のこもった応答がなされ、Zoomを通じたやり取りではありましたが、フロアと講演者の間で活発な議論が交わされました。

講演終了後、8号館Lounge#08にて、ご登壇の先生方とご来場の皆様に向けた茶話会を開催しました。講演会の熱気をそのままに、ジョイス愛読者の活発な交流の場として、イベント終了に相応しいプログラムとなりました。

国際編集文献学研究センターでは、今後も定期的に編集文献学にかかわるイベントを開催いたします。その際には、改めて本学サイトでお知らせしますので、ご興味?ご関心のある方は、ぜひご参加ください。